第27回全四国空手道選手権大会

2010年4月18日 高知・くろしおアリーナ


 Text & Photos/空手LIFE・人見武士

1年前とまったく同じ場所、同じ舞台で、同じ顔合わせ。しかし、結末だけは違った。
全日本ウエイト制大会と同じく今年で27回目を数えた全四国大会。メインとなる一般上級の部を勝ち上がってきたのは、前回大会王者の長野義徳と準優勝者の辻健介だった。

両者は昨年の第26回大会でも決勝で対戦した間柄。その時は、長野が下段蹴りで辻から一本勝ちを奪い、王座に就いた。この優勝をはずみにして、長野はウエイト制大会でも中量級決勝まで上り詰めることになる。今大会も前回同様に、5月に控えているウエイト制大会の足がかりにしたいと考えていたことだろう。

一方の辻も、今大会をウエイト制へのステップにしたいという思いは変わらなかった。しかし、辻にとって、この決勝戦はもう一つ、リベンジという意味合いも含んでいた。

「接戦になると思った」と辻が予想した通り、試合は本戦、延長、再延長と続いていった。リベンジか、返り討ちか。決着が持ち越される度に、観客席の緊張も高まっていった。



最後まで勝負を捨てなかった辻。リベンジに成功するとともに、念願の四国王者の座に就いた。
 
支部の仲間たちから激励され「負けられない」と思ったという。

辻は下段を中心に試合を組み立てていった。
 
2連覇まであと一歩だった長野。昨年、一本勝ちを決めた下段と、ヒザを効果的に繰り出していったが、辻の粘りに屈した。

試合は体重判定を経て、最終延長へともつれ込んだ。勝負を決めたのは、辻の「絶対に勝ちたい」という思いだった。長野の突き、ヒザ、そして一本を奪われた下段蹴りにも下がることなく、逆に突きと下段を効果的に浴びせ、優勝をもぎ取った。

「決勝の相手が長野選手に決まった時は『やるしかない』という思いでした。昨年は悔しい思いを味わったので、細かい作戦は考えずに思いっきりぶつかっていきました。試合中は冷静に闘えましたが、最後は支部のみんなの応援が後押ししてくれたので勝つことができたと思います」

ブロック大会初優勝という結果に加え、1年前に敗れた相手に勝てたことは、大きな自信につながったに違いない。敗れた長野も「昨年よりも強くなっていました。最後は精神力で負けてしまった」と辻の実力を認めていた。

師匠である前川憲司支部長をはじめ、この大会を制し、全日本や世界の舞台で活躍した選手は数知れない。辻もまた、その中の1人になろうとしている。



優勝した辻を前川憲司支部長や支部の仲間たちが拍手で迎えた。
 
前川支部長とともに優勝の喜びを分かち合った。

3位決定戦では、ユースの細川将大が他流派の藤田武史を本戦4−0で下した。
 
入賞者は上位3名が若手選手となった。新世代の台頭を感じさせる大会だった。

 

「四国の頂点は誰か!」

会場の大型スクリーンに映し出されたキャッチフレーズ。しかし、それは、いちブロック大会の王者になることを意味するだけではなくなりつつある。

現在、四国地区は精力的に強化稽古を行うなど、地区全体で熱を帯びている。昨年は野本尚裕、逢坂祐一郎、前川憲司といったワールドカップ日本代表メンバーも輩出した。

そんな同地区の勢いに感化されたかのように、今大会にも、関西をはじめ各地から多くの選手が参戦してきた。もはやブロック大会という枠を超えた舞台として注目を集めているのだ。

四国の頂点に立つことは、全日本レベルで通用する実力を備えていることの証明、さらには、必然的に世界との闘いを期待されると言える。

ウエイトトレーニングなどで基礎体力を強化し、今大会に臨んだという辻は、初戦から得意の下段と、最後まであきらめない心のを強さを武器に優勝した。王者になったことで、ウエイト制でも有力選手の1人となった。



準決勝では辻と細川が対戦。最終延長の末に辻が競り勝った。
 
辻に敗れた細川だが、現役ユースの勢いを感じさせた。

長野は準決勝で本戦5−0で藤田を破り、決勝へコマを進めた。
 
ユース出身の酒井瑞樹も新世代の一人。三回戦で藤田に体重判定で敗れたが、ウエイト制での巻き返しが期待される。

ベテラン勢も意地を見せた。敗れはしたものの、谷龍治は長野と最終延長までもつれ込む接戦を展開した。
 
高校生の部は、和歌山支部の村田恭平が優勝した。

どの部門でも一生懸命な選手の姿が見られた。
 
第41回全日本王者・塚本徳臣と第9回世界大会王者・塚越孝行による豪華なルール説明が行われた。

 

惜しくも準優勝に終わった長野も、初戦では胴廻し回転蹴りで技ありを奪うなど、ポテンシャルの高さを見せつけた。大会終了後には早くもウエイト制に気持ちを切り替え、優勝候補筆頭の第4回ワールドカップ中量級王者、アレクセイ・レオノフと「ぜひ闘ってみたい」と語った。道場では、レオノフと対戦経験のある師匠の山田一仁とともに対策を立てている。

17歳ながら3位入賞を果たした細川も、準決勝で辻と最終延長までもつれ込む接戦を展開した。ユース選手の活躍が目覚ましい地元・和歌山支部での稽古に加え、四国の強化稽古にも積極的に参加し、成長が著しい。

「ひじょうにレベルの高いトーナメントだった」と辻が振り返ったように、一般上級の部は白熱した闘いが続出した。その要因が、辻本人も含めた新世代の選手の台頭によるものであることは、上位3名がいずれも10〜20台前半という結果が示している。

そして彼らが世界の強豪や日本代表メンバーも参加する舞台でどこまで活躍できるか。真価はウエイト制で試される。



型・一般の部では、ドリームカップ王者の片岡悠太が優勝を飾った。
 
大会の最後に、三好一男大会実行委員長が、全選手のがんばりをねぎらった。

トーナメントの合間には、少年部の生徒たちが元気いっぱいの演武を披露。

会場のくろしおアリーナには、今年も多くの人が応援に駆け付けた。

今大会の入賞者と支部長・責任者たち。

開会式では、緑健児代表が選手たちを激励した。
 
表彰式では。中谷元衆議院議員が選手たちを祝福。

特別ゲストとして紹介された神取忍参議院議員は「新極真カラテを通じて健全な心を養ってほしい」と語った。
 
神取議員に続いて紹介されたスポーツライターの二宮清純さんは「坂本龍馬が生まれたこの高知の地から、壮大な夢を運んでもらいたい」とメッセージを送った。


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